彼がわたしたちに語ったこと -バリトン、ソプラノと吹奏楽のために(スコアのみ)
1951年、第二次世界大戦を終結させるためにサンフランシスコ平和条約が結ばれた。敗戦した日本は、ともすると中国やソ連などに分割されるところにあった。それを救ったのが、スリランカ(当時のセイロン)のJ.R.ジャヤワルデネ元大統領(1906-1996、当時は財務大臣)だった。スリランカは、日本帝国陸軍によるセイロン島コロンボ空襲を受けていたにも関わらず、「セイロンに於ける我々は、幸い侵略を受けませんでした」と表現したうえで、我々はブッダの言葉を信じている、と、「怨みは怨みによって止まず、ただ怨まないことによってのみ止む」というブッダ自身の言葉を引用し、日本に対する賠償請求権を放棄する声明を出した。今の日本があるのは、そして日本が自由であるのは、ブッダの言葉によって救われたからだ。(日本人はこのことを肝銘すべきである。)
夥しい仏教の教典の中で、ブッダ自身が説いた言葉はほんの一部であり、ブッダが話していたパーリ語で残されている。
この言葉をもとにして作品を書いた。
しかし宗教曲を書いたのではない。
およそどんな宗教でも、すべての人間も、真に切望することは同じで、普遍的である。
そのはずなのだが、世の中に戦争は絶えない。さまざまな国や地域に不穏な動きがある。
生きとし生けるものすべて幸せでありますように。
そして次代によりよい世界がおとずれますように。
さて、曲はバリトンの「生きとし生けるものすべて幸せでありますように」の祈りから始まる。
間もなくソプラノが、怒りをあらわにする。バリトンは、「そのように怨んでいたら怨みは止まない」と諭す。緩やかな音楽となり「怨まないことで怨みは止む」と歌う。「これが永遠の真理」と唱えたところでソプラノがこれに同調する。
穏やかな音楽でソプラノが「生きとし生けるものすべて、怯えているものも、強がっているものも」と歌い出すと、バリトンが「見えるものも見えないものも」と引き継ぐ。「すべて幸せでありますように」と二重唱になる。ユニゾンで「良きかな」と三回唱和して消え入るように全曲の終止となる。
(伊藤康英)
仕様
- アーティスト
- 作曲: 伊藤康英
- 演奏形態
- 吹奏楽
- 編成
- 大編成/38人~
- 商品カテゴリ
- スコア
- 演奏時間
- 0:13:30
- グレード
- 5
- 出版社 / 品番
- イトーミュージック / NAS-BK464A
- 発売日
- 2019/06/07
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Specifications
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- ARTIST
- Composer: Yasuhide ITO
- INSTRUMENTATION
- Windband / More than 45 Players
- PRODUCT TYPE
- STUDY SCORE (PARTS Sold separately)
- DURATION
- 0:13:30
- GRADE
- 5
- PUBLISHER / Code
- Ito Music / NAS-BK464A
- RELEASE
- 2019/06/07
- OVERSEAS SHIPMENT
- No
- EUROPEAN PARTS