題名の「高千穂」は、九州南部、日向と薩摩(現在の宮崎県と鹿児島県)の境に位置する「高千穂の峰」のことで、霧島山系一の霊峰であり天孫降臨(てんそんこうりん)伝説のの舞台として知られています。日本最古の歴史書である「古事記」によりますと、天孫降臨伝説とは、おおよそ次のようなお話です。
アマテラスオオミカミが、孫のニニギノミコトへ神の世界から地上へ降りて国を治めるよう言います。ニニギノミコトは、地上に降り立つ場所を示す鉾(ほこ)を高千穂の峰に打ち立てます。それが、現在も山頂に残っている「天の逆鉾」であると言われています。そのようにして、ニニギノミコトによる国造りが開始されます。
時が経ち、ニニギノミコトの子孫のカムヤマトイワレビコが、東方に王都としてふさわしい土地があると知り、奈良盆地へ攻め入り大和の国をつくりました。これを、神武東征(じんむとうせい)伝説と言い、交響組曲第一曲目の題材となっています。
このカムヤマトイワレビコが初代天皇として即位し、大和朝廷の開祖になったと言われています。いわゆる神武天皇です。
この作品は、霧島山系の豊かに広がる大自然とそこにまつわる神話をもとに、4つの曲からなる組曲として、2010年初夏に行われた、海上自衛隊東京音楽隊九州公演のために作曲されました。
交響組曲「高千穂」第四曲(最終曲)にあたる<紺碧の空、雲流る>は、霧島山系の自然を題材とした作品です。霧島山系には、最高峰の韓国岳、今も盛んな火山活動を続ける新燃岳、霊峰高千穂峰などが連なって山塊を成しています。
また、ススキやミヤマキリシマなどの植物のほか、アカマツの林など豊かな生態系が保存されています。紺碧の空を悠々と流れる雲、高原に吹き渡る爽やかな風にそよぐ赤松の林、そして可憐なミヤマキリシマの花々。雄大な自然が広がるこの地は、いにしえの時代を無言で語り継いでいるかのように、今日もゆったりとその威容をあらわし続けています。
曲は、第一曲の冒頭と同様、天孫降臨を表すファンファーレで勇壮に開始されます。前奏のあと、組曲中最も明るいテーマである第1主題が現れます。この旋律は6度音程を中心に書かれています。短2度上の調で再度歌われた後、木管群とホルンを中心とした中音楽器により第2主題(雲の主題)があらわれます。その後のやや長い移行部には、組曲中現れた主要な主題が対位法的にあらわれます。
続くAllegrettoでは、ビギンのリズムに乗って高原のテーマが展開されます。中間部では、第1主題の展開系であるゆったりとした旋律が現れ、結びに第三部に現れた旋律をピアノ独奏が、すべてを肯定するかのように奏します。ふたたび三部形式の再現部が現れ、最後に、天孫降臨のテーマが長調で響き渡る中、曲を閉じます。(河邊一彦)
宮崎県に生まれる。
大分県立芸術短期大学付属緑ヶ丘高等学校音楽科、武蔵野音楽大学音楽学部器楽科においてクラリネットを専攻。
クラリネットを故千葉 国夫氏に師事。1977年10月から2014年3月まで海上自衛隊音楽隊に在籍し、クラリネット奏者、指揮者として国内外において演奏活動を行った。この間、1990年には、東京藝術大学音楽学部(聴講生)、2003年から2005年には桐朋学園大学音楽学部(指揮研究生)において、指揮法、作曲理論等を学ぶ。2010年3月から2014年3月までの間、海上自衛隊東京音楽隊長として日本各地において演奏活動を行うとともに、国内外吹奏楽作品の録音を積極的に行った。特に「祈り~未来への歌声」(UNIVERSAL CLASSIC & JAZZ UCCY-1032)は、「第55回日本レコード大賞」企画賞、「第28回日本ゴールドディスク大賞」クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー、「第6回CDショップ大賞」クラシック賞の3冠を受賞。また、本アルバム等による吹奏楽界への貢献から、2014年度「第24回日本管打・吹奏楽学会アカデミー賞」演奏部門を受賞。
作曲家としては、ジャンルにとらわれない歌心あふれた作品を発表し、吹奏楽コンクールやコンサートなどで取り上げられている。特に、「歌と吹奏楽」の融合を意図した「交響組曲 高千穂」第2曲 仏法僧の森、「嵯峨野~ソプラノと吹奏楽のために~」などは吹奏楽の新しい可能性を追求した作品として注目されている。なかでも東日本大震災のために作曲された「祈り a Prayer 」は、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、東京ヴィヴァルディ合奏団、ニュージーランドのソプラノ歌手ヘイリー・ウエステンラ等のコンサートでも取り上げられている。
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