『完璧な音楽家』とも称され『アメリカ音楽』を作り上げたとされるジョージ・ガーシュイン(1898‐1937)の楽曲によるメドレーの第3弾です。曲は以下の3曲から構成されています。
「3つの前奏曲」より"前奏曲" 1-2小節目は、自由なテンポで落ち着いた響きが得られると良いでしょう。主部に入ってからは、安定感のあるテンポ設定が大切です。細かいパッセージも多く出てきますので、決して慌てた印象にならないようにしてください。強弱がめまぐるしく入れ替わります。その面白さを活かしつつ、[E]でクライマックスに到達するようダイナミクスを設計すると良いでしょう。
「エンブレイサブル・ユー」 ミュージカル《ガール・クレイジー》からの1曲。タイトルは「抱きしめたい人」というような意味で、実際の歌詞でも、男女間で愛を語る言葉が甘く情熱的に連ねられています。本来は男女それぞれが1コーラスずつを歌うのですが、この編曲では[F]のトロンボーンによる語りかけに[G]でフリューゲルホルンが応え、[H]でその気持ちが重なり合う(Flgl.とTrp.とは一心同体だと思ってください)……というイメージで音楽的ストーリを作り上げていくとロマンティックな雰囲気が出るかもしれません。[I]からの2小節間はドラマチックに、対照的に3小節目からは柔らかに包み込むような響きを作りたいところです。
「マイ・ワン・アンド・オンリー」 ミュージカル《ファニー・フェイス》のナンバー。ジャズ奏法のルールに則り、テヌート+アクセントのパターンは、後ろのアクセントを短く鋭く切ります。メロディの同音連打は、たたみかけるような雰囲気とスピード感があると魅力的な音楽になるでしょう。
[M]から「エンブレイサブル・ユー」が再現されます。この部分は、特に1 Trp.はスタミナ的にシビアなのですが、[N]1小節目の全曲のクライマックスに向けて上手くペース配分をしてください。[N]からは、ガーシュインの管弦楽曲のようなイメージで。最後の音は、スパッと明快に終えれば、会場の空間が響きを作ってくれます。
この編曲は、埼玉県立久喜高等学校吹奏楽部の委嘱により2016年に編曲したものです。同年12月26日に彩の国さいたま芸術劇場にて開催された、2016さいたまアンサンブルフェスタにおいて、同校金管六重奏(1 Trp. 長野友美、2 Trp. 谷川里穂、Hrn. 大浦日菜、Trb. 中野未悠、Euph. 仲丸詩乃、Tub. 福永詩生)によって初演されました。
(黒川圭一)
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