《天に咲くバラ》は、故・長谷川翔太君の追悼のために、長谷川家からの委嘱により作曲されました。
翔太君はきわめて優秀な、そして誰からも愛されるトランペット奏者として、カリフォルニア州サラトガにあるサラトガ高等学校のシンフォニック・ウインド・アンサンブル、マーチング・バンド、ジャズ・バンドで活躍していましたが、2010年の1月5日、拡張型心筋症のため、眠ったまま突然この世を去りました。
翔太君は、アメリカの作曲家エドワード・マクダウェルのピアノのための組曲《森のスケッチ》の第1曲〈野バラに寄す〉を、ことさらに愛していましたが、数百人のサラトガの人々が列席した彼の葬儀で、その旋律がどこからか突然聴こえてくる、という不思議な出来事がありました。
翔太君を偲ぶこの作品に〈野バラに寄す〉の旋律を使ってほしい、と長谷川家から作曲者への要望があったのは、このような経緯によるものです。
作曲者はその求めに応じ、さらにもうひとつの「バラの歌」 ブラームスが《11のコラール前奏曲》にその編曲を加えたプロテスタントのコラール〈一輪のバラは咲きて〉の旋律 も素材として用いることにしました。この作品のすべてのモティーフは、これらふたつの旋律をもとにしています。
《天に咲くバラ》は2014年6月にマイケル・ボイツ指揮のサラトガ高等学校シンフォニック・ウインド・アンサンブルにより、サラトガで初演。
さらにその年の夏に行われた同アンサンブルのスペイン演奏旅行を通じて、各地で演奏されました。
(後藤 洋)
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