才能豊かな音楽学者の沼野雄司さんが、クラシック音楽と映画音楽の関係について興味深いことを述べています。映画音楽が19世紀クラシック音楽の“次男”であるとしたうえで(ちなみに“長男”は20世紀の現代音楽)、両者には親子であるにもかかわらず、決定的な相違があるというのです。
「それは〈形式〉の問題です。クラシック音楽の歴史は、音だけで物語を作るにはどうしたらいいか、という形式との闘いでしょう。一方で、映画音楽は映像とセットになっているために、自律した形式を持つことが難しい。ゆえに、音楽だけ聴いても不都合な部分が多い。音響的な効果という点では、現代音楽を含むクラシック音楽の手法のすべてが取り入れられてはいるものの、形式の探求ということでいえば、クラシック音楽とは大きな切断があります・・・」
この「魔女の宅急便」セレクションをもって、私が吹奏楽編曲を手がけた久石譲作品は7曲になりましたが、どれもメドレー、もしくは組曲スタイルにまとめました。沼野さんの言葉を借りるならば、(少し大袈裟かもしれませんが)そうすることで映画音楽ゆえの形式感の不足をおぎない、クラシック音楽として通用する「構成」をつくり出そうと試みたつもりです。メドレーといえば、いわゆる“いいとこ取り”と思いがちですが、演奏者のみなさんには、こうした全体構築の意義をまず考えていただきたいと思います。
角野栄子の児童文学を原作とする長編アニメーション映画「魔女の宅急便」が公開されてから、まもなく20年が経ちます。久石譲が作曲したロマンティックなメロディーの数々は今もって人気が高く、さまざまなシーンで耳にします。ここではその中から「海の見える街」「仕事はじめ」(【D】~)、「傷心のキキ」(【H】~)、「突風」(【K】~)、「旅立ち」(【R】~)の5曲をメドレーに編みました。4曲目の「突風」だけは、サウンドトラックが制作される以前に作曲、CD化された〈イメージ・アルバム〉から選曲したため、映画本編には使用されていませんので、ご承知おきください。メドレーの構成は、これまでにも「風の谷のナウシカ」「キャッスル・イン・ザ・スカイ」「もののけ姫」のカット案を考えてくださった埼玉県立伊奈学園総合高等学校の宇畑知樹先生にお願いしました。先生の適切でユニークな構成力にはいつも感心します。この場を借りて、心よりお礼申しあげます。
編成上の留意点をひとつ。第3クラリネットのパートは初心者を想定し、第1、第2クラリネットよりはやさしく書かれています。ただし、なくてもいいパート、というわけではないので、割愛せずに演奏してください。なお、エンディングは静かなタイプと、盛りあがって終わるものの2種類を用意しましたので、お好きなほうをどうぞ。(2008年 森田一浩)
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