この曲は長崎県で活動する『アルビオン・クラリネット・ヴァリエ』の代表、舛谷氏の依頼でスタートしたアンサンブルシリーズの第4作目です。第1作目「コン・モート」を除く第2作目からを「超絶技巧練習曲」としていますので、この曲が「超絶技巧練習曲」第三番となります。「練習曲」ですから各曲一つの技術的テーマに基づいて作曲されています。第一番は「クロマティックスケール」、第二番は「アルペジオ」、そして第三番は「リズムとタンギング」という具合です。
この第三番は現代的な無調性の曲で、「急」「緩」様々な三拍子が組み込まれています。冒頭の序奏はパルスのような規則的なリズムが徐々に絡み合い始まります。ここではこれから始まる「三拍子」を身体に感じながら演奏してください。「急」の部分はあまり感情的にならず常にテンポを守りながら機械的に演奏することがポイントです。音符が描き出す幾何学的な模様を楽しんで下さい。「緩」の部分は大きな3拍子を感じながらたっぷり吹くようにしてください。フレーズとフレーズの繋ぎ目は演奏場所の残響や呼吸のリズムをも意識しながらしっかり間を取って次に進むと曲全体の雰囲気が一層よくなります。後半の「急」はあまり早くならず焦らないように演奏してください。
低音を受け持つパート(特に4th)はやや強めにしっかり鳴らしたほうが全体としてのサウンドが良くなります。短い音で連続タンギングする部分が多いので4本でしっかり発音と音量を合わせてください。聴き手に4本であることを忘れさせてしまう程、巧妙に演奏することが理想です。あまり力まず軽い響きで演奏するとより効果的なアンサンブルになるでしょう。
(阿部勇一)
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