交響詩「ジャングル大帝」は、1965年 66年にかけて放映されたテレビアニメ「ジャングル大帝」(第一話)が元になっている。オリジナルはオーケストラ作品で、当時の文部省指導要領を踏まえ、子どもたちがオーケストラの楽器について学ぶための材料として作曲された。1966年に発表され、2009年、再び作曲者自身の手によって書き直されている。
本作品は、主要な5つのシーンを軸として原曲に忠実に構成されている。第1主題である跳躍の音型(6)は、アフリカの広大な大地を連想させる。続く第2主題(14)の背景では、パーカッションによるアフリカ起源のリズムが奏でられていく。全体を通して最も印象的なのは、ホルンによるグリッサンドの音型だ。これはパンジャの威厳を表しており、曲中何度も登場することから、その存在がいかに大きいものであるかが伺える。それとは対照的に出てくるのが、テナーサクソフォン(原曲はチェロ)の独奏である。これはエライザのテーマで、母親としての愛に満ちあふれた優しさが表現されている。レオのテーマは、パンジャと同じくホルンで奏でられる。曲中最初に出てくるのはパンジャが「生まれてくる子どもに、レオと名づけてくれ」と言い残して死ぬシーン(94)で、レオが誕生してからアフリカの地を目指すまで繰り返し変奏される。幼いながらもジャングルを目指して海を渡ろうとする、レオの果敢な勇気が表現されていると言えるだろう。
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