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組曲「ドリー」は、フランスを代表する作曲家のひとりであるガブリエル・フォーレ(1845-1924)によって、1894年-1897年にかけて作曲されました。フォーレの友人でもあったアンリ・ラボーによる管弦楽版が広く演奏されていることもあって、フォーレの作品群のなかでも大変に良く知られている楽曲です。
タイトルの「ドリー」とは、作曲当時フォーレが親しくしていたバルダック家の幼い娘、エレーヌの愛称で、彼女の誕生日を祝うために数年間に亘って作曲されたといいます。原曲はピアノ連弾によるもので、プリモを子供が、セコンドを大人が弾くことを想定して書かれています。
このクラリネット6重奏編曲は、全6楽章のうちから、以下の3つの楽章を抜粋して編曲しました。
■第1楽章「子守歌」
A B Aの3部形式。分散和音によるゆりかごのリズムの上に優美な旋律が流れます。多くの部分がピアノのダイナミクスで書かれていますが、貧弱な演奏にならないよう息の支えを保って、また、弱奏のなかでも豊かに響かせる箇所など考えて演奏してください。
■第2楽章「ミ・ア・ウ」
A B Aの3部形式に、Bによる快活なコーダ。エレーヌにはラウル(Raoul)という兄がおり、幼いドリーがそれを上手く発音できず「メッシュー・アウル(Messieu Aoul)」と呼んでいました。元々は、それがタイトルになっていたそうなのですが、出版の際に、現在の「ミ・ア・ウ(Mi-a-ou)」に変更されたと言われています。「ミ・ア・ウ」とはフランス語で猫の鳴き声を表し、フォーレの本来の意図は分かりませんが、楽想からも猫が飛び回っているような様子を想起させます。
■第6楽章「スペイン風の踊り」
A B C A' B' C'という形式。「スペイン風」という標題の通り、南国的で躍動感溢れる楽章です。小節線を跨いでタイで結ばれている繋留音が多くありますが、1拍目をしっかりと感じていないとリズムが大変狂いやすいので十分な注意が必要です。バス・クラリネットが、全体のリズムを安定させる上で大切な役割を担っています。また、細かいタンギングも多いので、スタッカート奏法をしっかりと身につけ、基本的な奏法が乱れないよう気をつけましょう。
この編曲は、上尾市立上平中学校吹奏楽部の委嘱により2011年に編曲したもので、同年11月27日に行われた第35回埼玉県アンサンブルコンテストにおいて、同校クラリネット6重奏(E♭Cl. 鈴木明純、Cl.1 中川沙瑛、Cl.2 畑彩音、Cl.3 伊井朱音、Cl.4 樽見晴香、B.Cl. 江川莉菜)によって初演されました。
(黒川圭一)
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