この作品は元々、1919年から20年にかけて作曲された同声3部合唱(ア・カペラ)のための作品です。作曲者のカプレ(キャプレ)は今日、指揮者、またドビュッシーとの親交(多くの作品を初演、編曲)という視点で語られることが多いようですが、40余年の生涯に、神秘的で静謐な響を持つ数々の作品を残しています。中でも歌曲や合唱曲、宗教曲にその本領が最も発揮されていと言っていいでしょう。この「三声のミサ曲」もそうした作品のひとつで、内省性の高い傑作です。
「キリエ」「グロリア」「サンクトゥス」「アニュス・デイ」「オ・サルタリス」の5曲からなるこの曲を、ほぼ原曲に忠実に移しかえています。原曲が声楽のためのものですので、音域もそれほど広くなく、また技術上の困難さもあまり感じることはないかと思いますが、高い表現力が要求されます。わずか3声からなる「小宇宙」をぜひ体感していただけたら幸いです。同時に、カプレが研究したグレゴリア聖歌や中世のポリフォニーにもぜひ触れていただきたいものです。
(正門研一)
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