原曲はヨハン・セバスティアン・バッハが初期に作曲したクラヴィーア曲です。軍楽隊員として旅立ったバッハの兄、ヤーコブのために作曲されたものと考えられていますが、その経緯については異論や解釈の余地を残しているようです。
全6楽章からなり、各楽章には標題的な題名がつけられています。
1.アリオーソ、旅と思いとどまらせようとする友人たちのやさしい言葉
2.他国で起こるかもしれないさまざまな不幸の想像
3.友人一同の嘆き
4.友人たちは(どうしようもないと知って)集まり、別れを告げる
5.郵便馬車の御者のアリア
6.郵便ラッパを模したフーガ
今回、金管アンサンブルに編曲するにあたり、基本的には原曲に忠実であることを主眼としています。なかなか見る機会も多くないと思いますので、原曲の大譜表をスコアに記しています。こちらは管楽器との合奏を前提としたものではなく、楽曲構造の把握のために記載したものであるとご理解ください。
また、NHK交響楽団メンバーによって初演されたこの楽譜はバス・トロンボーンの使用を想定して書かれたものですが、チューバでも演奏出来るようにしております。オプションというには少々内容が異なる場面もありますが、それぞれの楽器が求めているものであるとお考えください。
1番トランペットにはピッコロ・トランペット(D管)のパート譜も用意しています。楽章によって向き不向きがあるでしょう、必要に応じて持ち替えていただいても良いかと思います。
そして、装飾についても触れなければなりません。
バロック音楽における装飾音は音楽の本質の一つであり、演奏者は隙あらば至るところに装飾を入れていたようです。現代のジャズにおけるアドリブと同じ位置付けということになりましょうか。”作曲という行為の外” にあると言って良いかもしれません。
さて、現在、私たちが手にできるバロック期の楽譜は、記号があちこちに書いてあるものから一切書いてないものまで様々です。書いてあったとしても、それは作曲者が指定したものなのか、編集者が書き込んだものなのか、通例となっているものなのか・・一つ一つ調べ上げるのは非常に困難です。
参考として記載してある大譜表には、私の手元にあった楽譜をベースに、私自身の意見も少々反映させた装飾を記しています。こちらを参考の上、管楽器による装飾の可能性については演奏者の皆様にお任せしたいと思います。煌びやかな装飾もよし、シンプルな響きもよし、いずれのスタイルであっても充実した音楽が形成されることは間違いないと思います。(井澗昌樹)
大阪教育大学教養学科芸術専攻音楽コース卒業。同大学大学院芸術文化専攻修了。作曲を澤田博、北川文雄の両氏に師事。
主な作品に、バリトン独唱と管弦楽のためのカンタータ「倭建命 流離譚」、トランペット八重奏曲「四季の奏鳴」など。吹奏楽作品に、「火の断章」(2008年度全日本吹奏楽コンクール課題曲)、「Bye Bye Violet」、「愛の祭壇」など。
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