松下功氏は、藝大の学生であった私とも気さくに話したり、一緒に飲みに行ったり、壁を作らず接して下さる方でした。そうして時間を過ごすうち、「実は若い頃、ファゴットのために曲を書いているんだよね」と、手書き譜のコピーを頂きました。お兄様がファゴットを吹かれていたこともあって、浪人時代(19 歳の時)に作曲したとのこと。「作曲科の受験の為に和声や対位法等の勉強に追われるで、その頃よく聴きに言っていた現代音楽のコンサートに憧れて、自分も好きに書いてみた」と初演時に本人が語っていますが、後年の松下作品とは異なり、若い頃の尖った感性が前面に出た作品のように思います。いわゆる『習作』のイメージだったのか、長年放置され、これまで公にはされていませんでしたが、作曲家・松下功の原点として、また貴重なファゴットのためのレパートリーとして定着することを願い、手書き譜を基に改めて校正しました。
中間部にファゴットのモノローグを挟みつつ、全体を通して幻想的な世界観が広がるこの作品が、長く後世に愛されることを心より願っております。
【解説 - 土屋(松下)律子】
この作品は浪人時代に書いたもので、没後すぐに纏めた作品リストには掲載されていません。
兄が音大でファゴットを専攻していたこともあって、この楽器を身近に感じて書いたようですが、兄には「こんなの吹けないよ!」と断られ( 手書きの譜がとても綺麗だった松下ですが、この楽譜は大変見にくくて、解読するのが非常に困難なものでした) 長年、放置されたままになっていました。それでも愛着があった様で、作曲してから20 年以上も過ぎた1995 年5 月に長野の仕事場『アトリエ東風』での第10 回コンサートで、藝大の同級生だった山上貴司氏と私で苦労して初演しました。
それからまた20 年近く経った頃、ファゴット奏者・依田さんに楽譜を渡していたそうですが、やはり譜が汚くて誰も音出ししてくれなかったとか…。今回、依田さんのご協力で楽譜を一緒に読み直し、ハッスルコピーに浄書もして頂いて、とても見やすくなりました。改めて音にしてみると、若い作品ではありますが、やはり松下の本質のようなものはしっかり感じることができます。 (松下功Memorial Concert2021・プログラムノートより)
■初演
コンサート in アトリエ東風 第10回
「アトリエ東風・春祭り」飯綱の山々に響くファゴットの妙なる響き
日程:1995年5月4日
演奏:山上貴司(ファゴット)、土屋律子(ピアノ)
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