2016年3月13日に開催された、第19回「響宴」の「スクールバンド・プロジェクト」のための委嘱作品として作曲しました。
「響宴」は、日本人が作曲した未発表、未出版の吹奏楽作品を発表するイベントで、その中の「スクールバンド・プロジェクト」は、中学校・高等学校の吹奏楽部、特に小編成のバンドでも取り組むことのできる教育的な作品を開発・発信することを目的としています。昨今は中学校・高等学校の小編成バンドのための作品が必要とされ、すでに現場を知る多くの作曲家によって多くの作品が生まれつつあります。しかし、新しいレパートリーを提案する場として認知されている「響宴」が発信する作品だからこそ、すでに存在するようなタイプの作品をわざわざ開発する必要はない、と考え、今回はスクールバンドのレパートリーとして今まであまりなかったタイプの作品を書き、新しい提案とすることにしました。
作曲にあたってみずからに課したことは、以下のとおり。これがこの作品のすべてです。
(1) 技術的なレベルはグレード3。
(2) 演奏可能な最少人数は20名。
(3) オーボエとバスーンとコントラバスは「オプション」としない。すべての楽器、すべてのメンバーが不可欠、という基本的な考えでオーケストレーションを行う。しかし楽器がない場合の代替案は提示する。
(4) アンサンブル全体を室内楽の集合体と考え、室内楽グループ同士が互いにかかわり合い(時には衝突し合い)、あるグループが音楽的な「実体」となり、他のグループがリズム、テンポ、調性や旋法の「ずれ」によって、その「影」となるような、重層的な構図を作る――曲のタイトルは、この考えに由来しています――。結果として、全員が揃って同じことをする、というスクールバンドの一般的な発想に対する新しい提案とする。
(5) 「影」の音楽的な象徴として、ジョン・ダウランド(1563-1626)のリュート歌曲《暗闇に、わたしは住みたい In darkness let me dwell》を(暗闇には影はない、という逆説的な意味も含めて)引用。さらに、すべての音楽的素材をこの曲に拠る。
(6) 形式的には自由。ただ、(闇の中で方角を見失うように)迷走していた音楽の方向性が次第に定まっていくように構成する。しかし、「影」は最後まで消滅しない。
(7) 一切の具体性を、描写を、「物語」を、持ち込まない。しかし、音楽的なコンセプトをより明快に示すために、空間の活用について試みる。実際には、演奏者の場所の移動、また金管楽器ベルの方向の転換などによって、複数の室内楽グループのかかわり合いや、「実体」と「影」による重層的なアンサンブルの構図を示す。
(後藤 洋)
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