夜空に一際美しく輝く金星は、西洋では古くからローマ神話の愛と美の女神「Venus」の名で呼ばれ、また日本においても「明けの明星、宵の明星」として、天球を彩る美しい星の象徴とされてきた。また、太陽系の中にあって金星は地球に最も近く、大きさや質量、組成も酷似していることから「地球の双子星」とも呼ばれている。
人類は長らく金星に対して「美の幻想」を抱いてきた。
地球よりわずかに太陽からの距離が近いため、つい数十年まで金星は気候の温暖な、まるで南の島の楽園のような風景の広がる星であると信じられていた。
またSF文学等の世界でも、しばしば金星人の存在が取り沙汰されたが、そのほとんどが美しい女性として描かれた。
しかし20世紀以降の観測技術の発展とともに徐々にその実相が判明するにつれ、金星が地球とは全く違う世界の広がる星であることがわかってきた。
分厚い硫酸の雲に覆われた薄暗い地表には、鉛さえ溶けてしまう摂氏460度という高温、自動車すら押し潰してしまう90気圧にも達する高圧の、「地獄」のような壮絶な世界が広がっていたのである。
地球と金星の運命を分けたものは何であろうか?
太古の金星にも大海原の広がる地球に似た世界が広がっていたと想像されているが、地球に比べわずかに太陽に近かったため、海水が蒸発し、同時に海水に溶け込んでいた大量の二酸化炭素が放出されてことにより、大気中の二酸化炭素濃度が極端に上昇し、それに起因する温室効果の暴走と激烈な温暖化がその大きな要因であるとされている。
そして、これはまさに我々の地球が直面する問題に酷似している。
19世紀の産業革命以降の化石燃料の大量消費とそれに伴って排出された温室効果ガスによる地球温暖化の引き起こす影響は21世紀に入り異常気象や海面上昇という形をとってますます深刻の度を強め、一刻も早く人類共通の問題として全世界が協力して解決に当たらないと、近い将来地球の環境は金星と同じ道を辿ってしまう恐れがある。
この作品は金星をモデルに、「美」と「地獄」という対極の様相を、旋律やリズム、また和声と非和声との響の対比として表現してる。また、それと同時にこの作品に接する音楽家皆が作品を通して、地球の直面する環境問題に目を向け、考えるきっかけになれば幸いである。(三澤 慶)
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