吹奏楽のための〈秘儀〉シリーズの第8作にあたる。
〈秘儀〉シリーズの各曲は、一種秘教的で儀式的な性格や、超現実的な神話性を主題として内包しており、中には「秘儀IV〈行進〉」「秘儀V〈エクリプス〉」や「秘儀VII〈不死鳥〉」のようにかなり生々しく妖異天変や神鳥の鮮烈なイメージやストーリー性を持つものもある。
そして今回、それらに対しこのVIIIでは、より大きな巨視的テーマを置くことになった。
それは、地界と天界の霊的な魂の交流と交響。大地の底から立ち昇るエネルギーと天界の彼方から降りそそぐエネルギーが、地と天の間の時空で交わり舞い踊るというイメージ。
そのイメージは超現実的であるが同時に体感的な現実でもある。人間はその時空に生きて、地と天の壮麗な秘儀に包まれ地天交響に心身五感を委ねている。
これは大自然への賛歌であり、そこに抱かれて生きる人々の平安を強く願う祈りの音楽であり、地天界の霊力を受けた命の輝きに対する祝典交響楽でもある。
曲は以下のように進行する。
〈序〉時空の幕開き。速い上行音形と下降音形が交差して波のようなうねりが生み出されてゆく。
〈地の歌〉ティンパニの強い一定拍動に乗っての低音管楽器群のユニゾン旋律。
〈天の歌〉金属打楽器のオーラを光背にして、トランペット&コルネットと高音木管楽器群によるメリスマ付き旋律。
〈地の踊り〉速い2拍子で地を踏み踊るスタッカート舞曲。木管に気流が生じる。
〈天の舞い〉高音域の速い変拍子の舞い。低音域に土を蹴るパルス。金管に渦のようにうねる旋律。
〈生き物たちの歌〉多数の生き物たちの歌が中空で激しく絡み合う。それを照射する光の波。ティンパニによる大地の脈動。生き物たちの上昇と下降。
〈地と天の歓喜〉地の叫びが天に届いてゆき、地天が交流合体しての法悦的興奮の脈動となる。
〈降りそそぐ光の中で〉光の風が降りそそぐ中で、トランペット、コルネットとホルンが祈りの旋律を奏する。ティンパニの活躍の後、コーダ。最後はD音が連打される。それは祈願成就のための地天入魂の連打。
(西村朗)
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