R.シュトラウスが40代でオペラ作曲家としての地位を築き上げるのに大きく貢献した作品が楽劇「サロメ」です。そしてその全一幕のオペラのハイライトが、“7つのヴェールの踊り”になります。原作のオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』はスキャンダラスな内容のため、なかなか上演されなかったのと同様に、オペラも当初予定されていたウィーンでの初演は叶いませんでした。
時は紀元30年頃、ユダヤのヘロデ王の宮殿。サロメは王妃ヘロディアスの16歳の娘で、ヘロデ王は義父にあたります。サロメは宴の席でヘロデの情欲むき出しの視線から逃れるよう宮殿のテラスにやってきたときに、古井戸に幽閉されていた預言者ヨカナーンの声に興味を持ちます。そしてサロメは、妖艶さに心を奪われている衛兵隊長ナラボートに媚びを売り、ヨカナーンを外に連れ出させました。しかしヨカナーンは彼女の誘いには目もくれず、口づけを拒んで井戸の底へと戻って行ってしまいます。
宴に戻ったサロメにヘロデは、「踊りを見せてくれれば望みの物をやろう」と持ち掛け、そこで踊られるのが7つのヴェールの踊りです。7枚の薄いヴェールを身に着け、一枚ずつそれを脱ぎ捨てていく妖艶なサロメの姿に王は釘付けとなります。やがて踊り終えたサロメに何が欲しいか尋ねると、その答えは「ヨカナーンの首」。さすがに思い直すよう説得をするもついに根負けし、役人に首切りを命じました。銀の大皿にのせられたヨカナーンの生首を持ち上げ、恍惚とした表情で口づけをするサロメ。その様を見た王は兵士たちにサロメを殺すよう命じたのでした。
原曲は4管編成の大規模な管弦楽が用いられています。したがって使用可能な楽器は極力残しながら、シュトラウスの色彩感が出るよう心掛けて吹奏楽のための編曲を進めました。当初はコンクール用カット版の形で埼玉県立与野高等学校吹奏楽部のために、のちに埼玉県立大宮高等学校吹奏楽部のために全曲版に改訂して編曲しました。(齋藤淳)
吹奏楽の指揮、指導者として全国に知られている。また、吹奏楽曲の編曲者としても活躍しており、交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」をはじめとしたR.シュトラウスの作品シリーズや、O.レスピーギの交響詩「ローマの噴水」などは多くの吹奏楽団によって演奏されている。2000年には、東邦音楽大学からの委嘱により、同大学ウィンドオーケストラのために加古隆氏による作品の吹奏楽編曲を手がけて好評を博した。
2005年には、西関東吹奏楽連盟より表彰されるとともに、川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団を指揮して記念演奏を行った。また、2009年に行われた埼玉県吹奏楽連盟50周年記念式典でも優秀指揮者賞を受賞している。
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