インターネットもまだそこまで普及していなかった当時、新聞の広告に載っていた「世界遺産全10巻ビデオセット」が欲しくて購入し、これらを題材に曲を書こうと思い立ちました。そして、まず前年にクラリネットとピアノ作品で《アクロポリス》という曲を書き、翌年に第2弾として書いたのが今作になります。(結局、世界遺産シリーズはこの2作で終了…。)
雄大なパルミラの神殿や劇場、門などの遺跡群と、女王ゼノビアの逸話のナレーションに惹かれて、自分の中で描いた異国大河ロマンのようなものを曲に紡ぎました。パルミラは現在のシリアに位置しますが、特段アラビックな音楽要素を使用したりせず、あくまでその時パルミラとゼノビアの映像と伝聞から受けたイメージで作曲しました。曲は、細かくいくつかの音楽が連なりますが、大きくは緩ー急の2つに分かれ、それぞれ祈りと踊りの性質を持ちます。曲は、全体に関わるモティーフを携えた静かなイントロから始まり、夜明け前のような緩徐主題から急激に熱量が上がりカデンツァに突入。流れるようなピアノのアルペジオに乗せて再度主題が歌われた後、戦い前夜の祈祷のようなイメージのフリギア旋法を使用した歌が歌われます。そして後半、急転直下の激しいピアノによって5拍子のプリミティブな踊りが繰り広げられます。その後、2拍子のリディア旋法のミディアムな踊り、ブリッジを挟み、ウォーキングベースが幾分ジャジー風の快速な最後の盛大な踊りで豪快に締めくくられます。(朴 守賢)
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