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紅蓮の斜陽、城山に映はえ
濃紺の森、赤々と染まる
若人の雄姿これに寸分たり
西南戦争の史実を基に、この作品を書き上げた。
本作を書くにあたり参考とした、山口常光氏の著書「陸軍軍楽隊史 吹奏楽物語り 」には、西南戦争(1877年)最後の激戦である城山決戦について、以下のような状況が記されている。
「九月二十四日。この日の払暁を期して官軍の一斉総攻撃がはじまるという未明のことである。突如として、官軍の陣地から力強くも、また哀切をきわめた軍楽の響きが、風に流されて城山一帯を包んだ。(中略)これぞ 望一世を圧した大西郷にはなむける官軍心やりの袂別の演奏である。身じろぎもせず、腕を組み頭を垂れて聞き入る西郷とその親衛隊、そして征討軍の将兵たち。指揮をとる陸海軍楽隊長、吹奏する楽員 すべての者がそれぞれの感慨をもち、なかにはこみあげる涙を押さえかね、嗚えつするものもいたことであろう。」
山口常光『陸軍軍楽隊史 : 吹奏楽物語り』(三青社出版部、1973年)
上記はジョン・ウィリアム・フェントンが薩摩藩軍楽隊に、日本で初めて吹奏楽を指導するようになって、わずか8年後の話である。この話が事実であるとするならば、音楽家・演奏家にとって、言葉ではけっして語り尽くせぬ、悲劇の物語である。
この時、いったいどんな楽曲が演奏されたのか。いまとなっては不明だが、この内戦の意義、後の近代日本史を鑑みるに、もし演奏された曲が、新しい日本の夜明けを象徴するような「国歌」であったならば・・・という願いや想像を込め、楽曲の終盤に「フェントン作曲:初代・君が代(ナショナル・アンセム)」を引用している。
本作は、学校法人玉名白梅学園玉名女子高等学校と福井県立羽水高等学校の2009年度委嘱作品である。
本作を書くきっかけを与えてくれた、新潮社・森重良太氏に、この場をお借りして、深く感謝申し上げる。
また、作曲中に他界した鹿児島の友人、美座賢治氏にこの作品を献呈する。
●編成について
・3rd Percussionの3Gongsは、チャイニーズ・シンバル(※Perc.2と共用可)や銅鑼などでも代用可。また1枚の楽器を、打つ場所やマレットなど工夫し、音色を変えながら演奏してもよい。
・5th PercussionのB.Dr.の(muted)と記された所は、布などでミュートをし、セーム皮のバチなどを使い、原始的な「太鼓」のような音色で。
・リハーサルマーク[E]から登場する2Small B.Dr.は、フロアトムやマーチング用のB.Dでも可。(両奏者)向かって右に高い音、左に低い音、共用のS.Cym.を挟んで対峙するようにセットする。場所はできる限り全体の中央にセッティングするのが望ましい。それぞれの最低音は(向き合った)相手の大太鼓を使用する。(この)S.Cymは、刀と刀がぶつかる音を模している。あまりサスティンが残らないよう、布などでmuteをかけても良い。
●演奏上の注意
・ad.lib表記のある箇所は、ロールなどであっても、持続音として捉えなくてよい。例えば冒頭、2nd PercussionのS.Cymは、空気の微振動。不規則なノイズのように伸縮させて。4小節目の1st PercussionのW.Blockも、鳥の声、木霊のような音色で。もちろん、それら選択と演奏は自由である。鍵盤楽器のad.lib.も、音列と音域さえ合っていれば自由で良い。
・リハーサルマーク[H]はリズム的、時間的な概念を持たず、辺りを漂うような感覚で。ナショナル・アンセム(国歌)は、どこからともなく聴こえてくるような響きで。
(ジェリー・グラステイル)
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