東海大学付属高輪台高等学校委嘱作品。
この作品は元々パイプオルガンのために作曲したもので、現代作品をもっと身近に感じられるような曲を書きたいと思い、聞き馴染みのある旋律を用いて新しい音楽を構築しようと試みたのが、この「モーツァルトの主題によるパラフレーズ」である。
パラフレーズ(Paraphrase)とは、元々の文や一節を他の言葉で言い換えることを指すが、音楽においては元の作品を別のスタイルで表現することを意味している。この作品では幻想曲ハ短調K.V.475、ピアノソナタ第8番イ短調K.V.310、ピアノソナタ第11番イ長調K.V.331(トルコ行進曲付)、アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク、歌劇「魔笛」序曲、交響曲第41番ハ長調「ジュピター」、「レクイエム」よりラクリモーサなど、モーツァルトを代表する有名な曲のモティーフを、随所に散りばめている。
全体は大きく2つに分かれており、それぞれ全く異なるキャラクターを持っている。まず前半部は半音階を多く用いた重々しい響き、そして様々な声部が同時に現れるポリフォニックな音楽が特徴である。途中、各楽器が独奏的なフレーズを演奏し後半部に推移するが、それまでの音楽とは異なり、Allegroの生き生きとした明るい雰囲気のなかで様々なモティーフが登場する。モーツァルトの曲にはシリアスな音楽もあるが、やはり明るい雰囲気の音楽が多い。この作品も「モーツァルトらしさ」を最後に表現している。(松下倫士)
東京藝術大学音楽学部作曲科を経て、2009年同大学院修士課程作曲専攻修了。卒業時に藝大同声会賞受賞。2014年東京音楽大学大学院修士課程伴奏科修了。これまでに第37回全四国音楽コンクール最優秀賞、日本交響楽振興財団第29回作曲賞、第5回北本ピアノコンクール最優秀賞、第22回宝塚ベガ音楽コンクールピアノ部門第2位、奏楽堂日本歌曲コンクール第19回作曲部門(一般部門)入選など多数受賞。東京フィルハーモニー交響楽団とラヴェルのピアノ協奏曲を共演。
近年は21世紀の吹奏楽“響宴”にて作品が取り上げられているほか、「土蜘蛛伝説」「巡礼歌」「2つの詩曲」などアンサンブル作品が全国各地で多数演奏され ている。 2012年には日本コロムビアよりCD「僕が僕であるために 尾崎豊 オン ピアノ」 (編曲・演奏)をリリース。また2014年に「夢見草 松下倫士ピアノソロアルバム」をリリース。伴奏ピアニストとしても活動し、多くの演奏家と共演し高く評価されている。
東京音楽大学、洗足学園音楽大学非常勤講師。21世紀の吹奏楽“響宴”会員。
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