この作品は新潟県佐渡島に伝わる、島の娘と越後の男との悲恋の民話に基づいて作曲しています。
「昔々、佐渡に漁師の娘でお弁という娘がいた。お弁は佐渡からちょうど向かいの越後から来た、船大工の藤吉と恋に落ちるが、佐渡での仕事が終わり藤吉は越後に戻ってしまうため、お弁は考えた末、夜に漁で使うタライ舟に乗って越後に通う事にした。
藤吉も最初は喜んだが、毎晩タライ舟に乗って自分の所へ来るお弁をだんだん恐ろしく感じてきた。
おまけに藤吉は妻子がいた。これ以上は来て欲しくないと思い、ある日お弁がタライ舟に乗ってやってくる時間を狙って、目印にしている岬にある常夜灯(灯台)を消してしまった。
目印を失ったお弁はそれから海を漂い、とうとう波にのまれ、朝になるとお弁の亡骸が浜に打ち上げられた。
お弁を死なせてしまった藤吉は深く後悔し、藤吉も後を追って海に身を投げて命を絶った。」
悲劇のストーリーを予想させるような序奏、お弁の純粋な恋心や一途な想い、落胆、嘆き、叫び…など、様々な心情や情景を表しています。この曲は歌う旋律が多いのが特徴です。緊張感がなくならないよう、間の取り方などにも工夫をし、演奏していただけると嬉しいです。(松下倫士)
東京藝術大学音楽学部作曲科を経て、2009年同大学院修士課程作曲専攻修了。卒業時に藝大同声会賞受賞。2014年東京音楽大学大学院修士課程伴奏科修了。これまでに第37回全四国音楽コンクール最優秀賞、日本交響楽振興財団第29回作曲賞、第5回北本ピアノコンクール最優秀賞、第22回宝塚ベガ音楽コンクールピアノ部門第2位、奏楽堂日本歌曲コンクール第19回作曲部門(一般部門)入選など多数受賞。東京フィルハーモニー交響楽団とラヴェルのピアノ協奏曲を共演。
近年は21世紀の吹奏楽“響宴”にて作品が取り上げられているほか、「土蜘蛛伝説」「巡礼歌」「2つの詩曲」などアンサンブル作品が全国各地で多数演奏され ている。 2012年には日本コロムビアよりCD「僕が僕であるために 尾崎豊 オン ピアノ」 (編曲・演奏)をリリース。また2014年に「夢見草 松下倫士ピアノソロアルバム」をリリース。伴奏ピアニストとしても活動し、多くの演奏家と共演し高く評価されている。
東京音楽大学、洗足学園音楽大学非常勤講師。21世紀の吹奏楽“響宴”会員。
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