2011年、ABAオストワルド賞受賞曲
さまざまな方向からさまざまな異なった音楽が聴こえてくる、そんな音楽体験を目指した曲を、ここ数年書き続けています。『バンド維新』のために書き下ろしたこの《ソングズ》もそのような作品のひとつで、バンドのメンバーひとりひとりがソリストとなって、シンプルな旋律を(あるいはその断片を)自由に奏で、それらが立体的に重なり合うことをコンセプトとしています。
これは奏者の個性を全体に埋没させて「ずれないように、はみ出さないように」合奏することを尊重しがちな、日本のアマチュア吹奏楽へのささやかな問題提起でもあります(もちろん、全員が終始ばらばらに 演奏するわけではなく、一緒になる場面もたくさんあるのですが)。さまざまな「ソング」は、実際には静と動の2種類。いずれも冒頭のクラリネットの旋律を 母体としています。これらの「ソング」が時に対比され、また時には重なり合いますが、最後まで完全に調和することはありません。
「ひとりひとりがソリスト」ですから、ひとつのパートをひとりずつ、合計24人で演奏されることを想定しています。バンドの事情により、指揮者の判断でメンバーを増員してもかまいませんが、各自が自由に演奏する部分がほとんどのパートにあるため、そのまま完全に音を重ねることは難しいでしょう。オプショナルのオーボエ、バスーン、ダブルベースを除けば、省略してよいパートもありません。この録音では、楽譜上の指示に従い、オプショナル・パートを他の楽器で代替しています。
奏者の自発性を要求し、また一部に特殊な記譜法が用いられているものの、技術的には、中学生、高校生にも容易に演奏できるレベルです。
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