日本史上、中世以前は「蟋蟀(コオロギ)」とはセミをも含むあらゆる鳴く昆虫を指していたようで、現在でも学問的厳密性を要さない日常会話上では、コオロギ科でないカマドウマやコロギス、ヒメギスなども「コオロギ」に含むことがあるようです。虫のいる小さな世界に耳を傾けてみると、そこには別の世界があることに気が付き、幻想を感じます。
冒頭部分は虫の音を真似るようなリズムで始まります。幾つかの規則的なリズムは、各自違う時間軸を持って鳴いている虫たちを表現し、いつしか複雑に絡みながら合奏のように感じられてきます。そしてその合奏が鳴り止むと、ひと吹きの冷たい夜風が吹くイメージでしょうか。秋の気配を感じさせるイメージでしょうか…。しかし、まだまだ暑さが残るこの夜は、虫たちと共に摩訶不思議で怪しげな世界へと導かれてゆくのです。曲中に使われる「風鈴」2台は、岩手県産の南部風鈴のような音が理想です。
委嘱:アルビオン・クラリネット・ヴァリエ(長崎県) 2011年8月10日
(阿部勇一)
■特殊楽器
南部風鈴 A《Nanbu-furin A》(Bよりも高音のものを使用)
南部風鈴 B《Nanbu-furin B》(Aよりも低音のものを使用)
※風鈴はスタンドで固定し、うちわなどで扇ぎ鳴らすとより自然な音が出ます。
■特殊奏法
With Mouthpiece only [マウスピースだけで演奏]
Like the Tanna japonensis =ひぐらし[セミ]のように。
ひぐらし[セミ]のように、自由に表現してみてください。
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