この曲は、戦国の世に波乱万丈の生涯を送った細川ガラシャを描いた作品です。
明智光秀の娘として生まれた彼女は、主君、織田信長に対する父の謀反(本能寺の変)により悲劇的な運命をたどります。逆賊の娘という烙印を押された彼女は、やがてキリスト教へと傾倒し「ガラシャ Gracia」という洗礼名を授かります。それは、ラテン語で「恩恵、神の恵み」を意味する言葉です。戦国の動乱に巻き込まれ、やがて覚悟の死を遂げるガラシャ、わずか三十八年の生涯でした。
曲は、不穏な世を表す短い前奏の後、儚げなガラシャのテーマで始まります。テーマが次第に高揚していくと、鍵盤楽器群の急速で不安なモティーフの上にグレゴリオ聖歌「最後の日 Dies Irae」が金管群によって強奏されます。やがて父である明智光秀の主題、そして本能寺の変を現すパワフルでドラマティックな音楽へと流れ込んでいきます。低音楽器群が光秀の強い覚悟を表すような主題を奏でると、次第に音楽は静まっていきます。
中間部では、教会のステンドグラスから差し込む穏やかな光の中で神に祈り、また隠棲の地〈味土野〉で、幸福だった日々を懐かしむガラシャの姿が描かれます。しかしその追想も束の間、静寂の中から、不気味な不協和音をきっかけに石田三成の軍団が現れます。(石田三成は、徳川家康が上杉討伐に兵を起こした際に、これに従った細川忠興を始めとする大坂城下に屋敷を構える家康方の大名から人質を取ることを企て、慶長5年(1600)7月17日、まず細川家屋敷に軍勢を差し向け、ガラシャに人質になるよう強要したのです。ところが、彼女はこれを敢然と拒否し、屋敷に火をかけて最期を遂げました。)強烈な野心と一糸乱れぬ行軍を現す5拍子の音楽が最高潮に達すると、自らの死を悟ったガラシャの辞世の句 「ちりぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」のテーマが奏でられます。やがて、ガラシャの嘆きと悲しみを表すような悲壮なファンファーレの後、鋭いリズムの連打で強烈に曲は閉じられます。
この作品を通して、運命に翻弄されながらも神への信仰を通じて自らの人生を全うしたガラシャに、心を寄せてくださる方が一人でも増えることを私は願っています。(河邊一彦)
早稲田吹奏楽団40周年記念委嘱作品
宮崎県に生まれる。
大分県立芸術短期大学付属緑ヶ丘高等学校音楽科、武蔵野音楽大学音楽学部器楽科においてクラリネットを専攻。
クラリネットを故千葉 国夫氏に師事。1977年10月から2014年3月まで海上自衛隊音楽隊に在籍し、クラリネット奏者、指揮者として国内外において演奏活動を行った。この間、1990年には、東京藝術大学音楽学部(聴講生)、2003年から2005年には桐朋学園大学音楽学部(指揮研究生)において、指揮法、作曲理論等を学ぶ。2010年3月から2014年3月までの間、海上自衛隊東京音楽隊長として日本各地において演奏活動を行うとともに、国内外吹奏楽作品の録音を積極的に行った。特に「祈り~未来への歌声」(UNIVERSAL CLASSIC & JAZZ UCCY-1032)は、「第55回日本レコード大賞」企画賞、「第28回日本ゴールドディスク大賞」クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー、「第6回CDショップ大賞」クラシック賞の3冠を受賞。また、本アルバム等による吹奏楽界への貢献から、2014年度「第24回日本管打・吹奏楽学会アカデミー賞」演奏部門を受賞。
作曲家としては、ジャンルにとらわれない歌心あふれた作品を発表し、吹奏楽コンクールやコンサートなどで取り上げられている。特に、「歌と吹奏楽」の融合を意図した「交響組曲 高千穂」第2曲 仏法僧の森、「嵯峨野~ソプラノと吹奏楽のために~」などは吹奏楽の新しい可能性を追求した作品として注目されている。なかでも東日本大震災のために作曲された「祈り a Prayer 」は、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、東京ヴィヴァルディ合奏団、ニュージーランドのソプラノ歌手ヘイリー・ウエステンラ等のコンサートでも取り上げられている。
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