「明鏡止水」という言葉は『荘子』の徳充符篇に由来がある。徳充符篇の内容としては「心の内面が徳で満たされるとそれが外面にも表れる」ということを四つの寓話で説明したものになるが、「明鏡」は二番目の話に、「止水」は一番目の話にそれぞれ登場する。
「明鏡」は「鏡が澄んでいれば塵垢は付かず、塵垢がつけば鏡は曇ると言うが、長らく賢人と一緒にいて鏡の曇りを拭い去ってもらうと、塵垢のような過ちもなくなる」という文脈で、「止水」は「流れ動く水ではなく静止した水に顔を映そうとするように、静かな心だけが静けさを求める人々に静けさを与え、人々を惹きつけることができる」という文脈でそれぞれ登場するが、明鏡も止水も賢人を、心の内面が徳で満たされた人を比喩した表現となる。現代において明鏡と止水が組み合わさった「明鏡止水」という言葉は「心に邪念ややましさがなく、澄み切って落ち着いた心の状態」をいう。
本作品では、明鏡止水の言葉の由来や意味に着想を得て、明鏡止水の境地に至るプロセスを表現しようと試みた。不安定な心の状態から賢人の教えを経て澄み切って落ち着いた心の状態に至るプロセスを、作品を通して体感してもらえればと思う。
また本作品は「6本のクラリネットのための」とせずに「6人のクラリネット奏者のための」と表記することにした。これは、作品編成を(バスクラリネットやアルトクラリネットなどの同属楽器を用いずに)B♭クラリネットのみで構成するにあたり、それぞれの奏者が対等な立場で主張するようなアンサンブルを目指して作曲したためである。作品の聴取と合わせて聴きどころとして楽しんでいただければ幸いである。
大阪府立生野高等学校を経て、神戸大学発達科学部人間表現学科を卒業。試行錯誤の場と作品発表の場の創出を目的とした作曲団体、「音楽集団おとつくらぼ」を創設し、代表を務める。21世紀の吹奏楽 第25回”響宴”入選。
<主な作品>
・百鬼夜行 -クラリネット六重奏のための- (2019)
・笑顔の過程 -サックス四重奏とピアノのための- (2020)
第30回TIAA全日本作曲家コンクール室内楽部門 第3位
・イルミネーション・マーチ(吹奏楽、2022)
・已己巳己(オーボエ属アンサンブル、2023)
第1回オーボエアンサンブルFil*coule作曲コンクール 第3位
・ア・ニュー・チャプター・イン・マイ・ライフ・ビギンズ・ナウ!(吹奏楽、2023)
21世紀の吹奏楽 第25回”響宴”入選。
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