「付喪神(つくもがみ)」は、音楽を通じて語られる怪談であり、日本特有の超自然現象を美学的に捉えた作品です。
『私は日本文化が大好きで、その人々の伝統を自分なりの視点から称える何かを書きたいと思っていました。日本へは2007年に「翡翠(Kingfishers Catch Fire)」の初演で初めて訪れ、その後も何度か訪れました。妻アビーとの新婚旅行も日本でした。
「付喪神」の話を始めて聞いたのは、アビーからでした。100年経つと日用品や道具に精霊が宿り、自らの意思をもつようになるというものです。このアイディアが気に入り、無害なものといたずら好きなものが交互に(そして踊るように)登場する音楽を作ることにしました。私は付喪神が害を及ぼす存在とは考えていません。彼らはいたずら好きで、いつも物には使い道があり、捨てるときにはよく考えるようにとの教訓を与えてくれます。そうしないと悪戯されるかもしれません・・・』
この作品は、比較的短い2つの楽章からなり、それぞれが付喪神の幻想的な性質を表現しています。第1楽章は恐怖の悲鳴で始まります。鳴り響くパーカッションと不協和音のクラスターが、予期せぬ展開へと導く行進のリズムを生み出します。この不協和音から、不自然なものからかけ離れた、穏やかで泡のように弾ける点のように散りばめられた音が現れますが、その中で不思議な幽霊のような幽玄なトロンボーンのグリッサンドが現れます。夢見心地のオーボエのソロが音楽の流れを続けるかのように感じさせますが、ほぼ直ぐに(そして何度も)冒頭の絶叫の断片が割り込み、中断されます。不気味な雰囲気を一層強めるかのように、新しいフレーズごとに次々と移り変わるハーモニーの中で展開し、不安定さと不安感を感じさせます。楽章のクライマックスでは、2つのアイディアが融合し、夢見るメロディが攻撃的な性格を帯びて、実は最初から2つが同じであったことを示します。楽章は不気味に終わり、付喪神の妖怪の側面が全面に現れます。
第2楽章は、対象的に上行形のモチーフを強調する短い美しいコラールで始まり、その後、非対称の変拍子の不穏な舞曲が登場します。第2楽章は多くの点で第1楽章が反映されており、活気に満ちたテクスチュアは1楽章のものを模倣しており、主旋律は再び長いオーボエのソロで提示され、そして冒頭のコラールと融合します。2つの楽章は、付喪神を2つの異なる視点から見ていると言えるかもしれません。第1楽章では、家の住人が突然、自分たちを取り巻く霊の存在に気付き、恐怖と不安を感じる一方で、第2楽章では、付喪神自身の視点から、自分たちの家への愛着、遊び心がありながらも意図をもっている様子が伺えます。しかし、コーダは制御不能な速さと激情で展開し、このような親切な霊たちが(大抵は)友好的な意図を持っているにもかかわらず、時にはただ手に負えないほど暴れることがあるのです。
(ジョン・マッキー)
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