2011年3月11日。
「日常」から逸脱した「現実」。それを受け入れるには、心を崩すしかありませんでした。悲鳴、泣き声、火事、爆発、様々な臭い、空腹、冷気、疲労。それらと不安や絶望といったネガティヴな感情と戦うには、心を崩すしかありませんでした。崩れた心で「見る」ことは簡単でした。しかし、「感じる」ことを放棄した心は、のちのち私を苦しめました。内陸に避難したとき、感じたことのないストレスを感じました。見たことに対する罪悪感、生きてることへの疑問、支援に対する感謝と同じだけの絶望。現場で昼夜問わず体を動かし続けてたほうがどれだけ楽なことかと思いました。
やっと「生」を感じ初めたころ、ひとつの欲が生まれました。
「音楽がやりたい」。
その愚かさに腹を立てました。そんな贅沢を言えるような状況ではありませんでした。しかし、私にとっての「生」は音楽があってこそだということに気がつきました。
そのときの私にとって、音楽はポジティブとネガティヴ、両方の意味をもっていました。音楽は未来であり、同時に嫌悪でもあったのです。震災から間もないころは、嫌悪に負けて音楽に触れることを恐れました。それまで絶対的な力があると思っていた音楽は、本当の極限状態ではどうしようもなく無価値でした。音楽では、胃を満たすことも、寒さを和らげることも、泣いてる子供をあやすことも、亡くなった人を呼び戻すこともできません。私はその無価値さを受け入れて、初めて本当の音楽を見つけることができました。私にとっての本当の音楽とは「生きてる音楽」です。望んで欲して叶った音楽。それを見つけたとき、私は音楽を一生続けることを決意しました。
「いつ死んでも後悔がないように毎日を生きて、音楽で震災と向き合い、音楽で震災を伝えていく」。
震災から5年が経ち、一緒に肩を並べて戦ってくれる仲間ができて、理解のある方々に囲まれて今を生きることができています。これほどない幸せを感じています。しかし、震災を伝えていくには、より多くの方々が手を取り合って、未来と過去を見つめる必要があります。
企画者の皆様。我々と一緒に考えてください。今を生きる被災地の人が笑顔になるような企画を。
音楽家の皆様。我々と一緒に音楽を届けてください。その一音一音が未来と過去をつなげる文化なのです。
これからこそ被災地に音楽が必要です。無価値な音楽が本当の価値を発揮するときです。我々と一緒に、その胸にある想いと熱を届けてください。我々はつねにその最前線に居続けます。一緒に戦ってください。(臺 隆裕 だい たかひろ)
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