作曲者のビル・ウィーランは現代アイルランドを代表する作曲家/プロデューサーで、代表作リバーダンスに関しては、いまさら私が解説するまでもなく、1995年アイルランド/ダブリンでの初演以来、全世界を熱狂の渦に巻き込んだアイリッシュダンスと音楽のショーです。1999年には日本にも初上陸、それ以後も度々来日し日本国内でも熱狂的なファンを獲得、かくいう私もその一人です。
ショーは2幕2時間の作品で、1幕はいわゆるアイルランドにおける民族の文化や音楽のルーツを、2幕ではその後さまざまな苦難の末にアメリカ大陸や世界各地へと移民せざるをえなかった民族の離別から、新世界に渡り様々な文化や音楽と出会い融合し、新たな歴史を生み出していくエネルギッシュな民族性が表現されており、タイトルのリバーダンスは1幕の最後に演じられるナンバーです。
叙情的で語るような前半、哀愁を帯びた民謡調なメロディー、エネルギッシュな混合拍子による繰り返しのたたみ掛けるような舞曲。一度聴いたら、観たら忘れられない印象的な作品です。
曲は「Cloudsong」「The Dance of the Riverwoman」「Earthrise」「Riverdance」の4つの部分から成っていて、これまでもオリジナル以外に民族楽器によるもの、バンドや管弦楽など様々なスタイルのアレンジが出ています。この編曲はそれぞれの良い部分を集約し吹奏楽でより効果が得られるように考慮して編曲しました。
細かい諸注意以上に、先ず原曲のCDやDVDを一聴、一見していただくことをお薦めします。
【パーカッションについて】
曲中のパーカッションパートはスコア上はティンパニを含め7パート、曲の最後の部分は最大8つの打楽器が同時に書いてあります。これはショーそのものが「生」演奏ではなく、あらかじめ録音された音源にソロパートや演出上の楽器をステージ上でさらに重ねているためで、実際ショーの演奏担当のパーカッションは1 2名で演奏しています。8人のパーカッション奏者をすべて揃えるのは各バンドの現場を考えると容易なことではありません。ですから、各楽器の配置などを工夫して必要最小限の人数でも演奏出来るように工夫をしてください。それは打楽器アンサンブルを演奏するように一人が複数の楽器を担当するいわゆるマルチパーカッションの考え方です。(打楽器アンサンブルやマーチングバンドなどでは一般的な方法)セットドラムを例に考えると、どんな複雑なリズムを叩いていても同時に出せる音は4つまでです。ですから、複数のパートの基本的なリズムパターンやアクセントの位置を押さえれば全ての音が同時に鳴っている必要はありませんし、曲の持っている雰囲気も損ねることなく演奏が可能です。ティンパニなども、曲を盛り上げる効果として補助的に使っている部分が多いので割愛することも可能ですし、セットの楽器自体を複数の奏者に分けて配置すれば全ての音の演奏も可能です。 楽器の種類も、Bodhranはオプションとして割愛することも可能ですし、一般的な民族打楽器という意味でのTaborはコンガやジャンベなどの楽器に置き換えても構いません。
ブリティッシュスタイルの金管バンドのように最小2 3人でも工夫次第では演奏可能です。是非、各バンドで工夫してみていただきたいと思います。(建部知弘)
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