19世紀後半に、ロシアの民俗的な芸術音楽を志向した作曲家グループ“5人組”のメンバーであったボロディンは、化学者を本業としながらも、(全体の作品数こそ少ないものの)今日でも盛んに演奏される音楽史に残る数々の名曲を作曲しました。この弦楽四重奏第2番は、1881年に作曲、翌1882年1月14日に初演され、ボロディンの妻、エカテリーナに献呈されました。民俗的な要素を多く取り入れた、ロシア音楽を代表する室内楽曲と評されています。
今回は、すでに出版されている第1楽章(ブレーン・アンサンブル・コレクション371)とは異なる編成の木管7重奏で、スケルツォの第2楽章と「夜想曲」として有名な第3楽章とを編曲してみました。
曲中「p」「pp」などの指示が多くありますが、弱奏の際も、息の支えやスピードを保つよう心掛けてください。特に2楽章で、軽快な音楽的ニュアンスを出しつつ、丁寧な発音でピアノを演奏するには十分な練習が必要でしょう。また「p」を絶対的な強弱指示と捉えてしまうと、音楽表現の幅が狭くなってしまいます。ダイナミクス、音色、息のスピードなどを工夫して、豊かな表現を心掛けてください。
どちらの楽章もダウン・エンディングです。2楽章は、指先が弦に軽く触れるようなピッチカートをイメージして、3楽章は、美しい響きを保ちつつも消え入るように、そして会場の空間が静寂に包まれるような雰囲気作りができると魅力的かつ印象に残る演奏になるでしょう。
この編曲は、基本的には弦楽4重奏のトランスクリプションですので原曲に対する十分な研究が求められることは言うまでもありませんが、一方で、木管アンサンブルならではの音色感も企図しています。多彩なイメージを持って演奏に臨んでください。また、この種の混合編成においては、バランスに対する配慮が欠かせません。事前のリハーサルでの十分な調整が必要です。なお、演奏効果を考慮し、3楽章は原曲より短二度高く編曲しました。また、この2つの楽章を演奏する場合、楽章の順序を入れ替えたほうが効果的かもしれません。
この木管7重奏の編曲は、青梅市立泉中学校吹奏楽部の委嘱により2013年に編曲したもので、同年12月26日に開催された2013 TAMAアンサンブルフェスタにおいて、同校木管7重奏(Fl. 坂本幸子、Ob. 菊澤美乃莉、Cl.1 金澤宏樹、Cl.2 岩崎由佳、A.Sax. 奥富香名恵、T.Sax. 原田あみ、B.Sax. 増田琴美)によって編曲初演されました。
(黒川圭一)
2楽章[5:00]
3楽章[8:00]
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