1980年代は私にとって最も「作曲家」らしい時期であった。音楽之友社から刊行された「日本の作曲20世紀」にも、滝廉太郎から77人の作曲家の一人として選ばれ、「この人の最盛期は1980年代で」と書かれている。とくに1985年は作品数が多く、オペラ「火の鳥」、管弦楽曲「いばらの城のお姫さま」などが相継いで書かれ、NHKテレビ「徹子と気まぐれコンチェルト」「ゆかいなコンサート」のための作品も頻繁に発表されたのだった。
その一つに、日本打楽器協会の求めに応じて作曲した「イリアス」がある。同協会の委嘱作品第一作は小森昭宏先生によるもので、この作品は第二作に当たる。もともと作曲者は打楽器に対して、その豊富な音色を最大の魅力と感じていたので、それを駆使できる機会を与えられて嬉しかった。と同時に、本来の性質であるダイナミックな躍動感も重要だと考え、題材をギリシア神話の「イリアス」(ホメロスの伝承による)に求めた。
神話とは言ってもその物語を牽引するのは人間たちであり、とくに戦闘の生々しさは筆舌に尽くし難いほどで、ときにトロイア戦争の引き金となった絶世の美女ヘレネに対する優美さが、その救いとなっている。その動と静、男性性と女性性の異なる魅力の対比を描こうとした。言うまでもないが、?は静であり、?と?は静と動が同居している楽章である。そのために?+?、?+?のみを演奏することも可能であろう。もとより、全曲を演奏するのが最上であることには言を俟たない。
六名の奏者ということは、室内楽の分野に入るだろうが、全員が必ずスコアを研究し、全体における自らの役割をわきまえなければならないだろう。指揮者を付けることは、積極的には薦められない。その箇所において重要な音型を受け持つ奏者に委ねられる。そのために、全員の視線が交わるような楽器の配置が望ましい。
初演をお聞きくださったお客様の中に、当時NHK交響楽団のティンパニストだった岡田知之先生がおいでになり、それが次の「バブリング創世記」の委嘱に繋がる。
初演後、東京藝術大学打楽器科の主任、有賀誠門先生の目に留まり、門下生の会で採り上げられ、その稽古に呼ばれたが、全てを口三味線で練習し、自己を表現し切れない上級生の男性が泣いてしまい、同席するのにしのびなく退出した記憶がある。その方は現在、札幌交響楽団のティンパニストになっているが、打楽器のレッスンとは個性的なものだな、と思った次第である。
(青島広志)
Ⅰ ファンファーレと犠牲の踊り:ca 5’08”
Ⅱ ヘレネ: ca 5’21”
Ⅲ 戦闘とアキレスの葬送: ca 6’46”
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