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ベートーヴェンの《大フーガ》op.133は彼の最晩年の傑作のひとつに数えられながら、一般的な認知度は《交響曲第9番》などに比べてはるかに低い。弦楽四重奏曲というやや地味な編成で、しかも難易度が非常に高いのが理由だろう。さらに作品130の弦楽四重奏曲の終楽章として作曲された関係上、現在では作品130の中に入れられて1時間を超える音楽として演奏されることのほうが多い。そのため残念なことに、この曲は耳に入れる機会が極めて少ない秘奥の曲となってしまっている。
このベートーヴェンの偉大な創意からの賜物を、より多くの耳に入れるためには、吹奏楽への編曲というのは妥当なアイディアに感じられた。何より、「ベートーヴェンの書いた最も剛直な楽想」と言われる音楽の媒体として、機動力と強弱表現の豊かな現代の吹奏楽は最適な媒体のようだ。ベートーヴェンも彼の存命時代に管楽器の能力が今ほど高かったら一考したかもしれない。しかし、ベートーヴェンがこの楽曲で使用している音型は大きな跳躍を持ち、その跳躍は弦楽器ならではの特性を引き出す効果として特化して用いられたものだ。このあたりは楽器の指定にあまり意味をなさない大バッハの《フーガの技法》のフーガとの違いのひとつといえる。残念なことに、この弦楽器の特性を意識した音型は、多くの管楽器には適さない。そのため編曲されたこの版も、多くの対処方法としての工夫処理をしているものの、原曲の弦楽四重奏曲と比較しても、負けないくらいの高度なアンサンブル能力と楽器吹奏能力を要求するスコアとなった。さらに全体で17分という長さは、かなり厳しい持続である。そのため、いくつかのカット版をつくることが可能な処理をした。カット版に関しては後で詳述する。
以下フルスコアに記載がございます。
ii ・全体の構成について
iii・カット版について
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