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オーストリア=ハンガリー帝国の皇帝、フランツ・ヨーゼフ1世の皇后エリザベートの数奇な生涯を元に、脚本をミヒャエル・クンツェ、作曲をシルヴェスター・リーヴァイの手によって1992年に創作されたウィーン発のミュージカルです。日本では1996年宝塚歌劇団により、続いて2000年からは東宝版もそれぞれ上演が繰り返されており、現在もなお高い人気を誇っています。
自由を愛するエリザベートは、皇后として嫁いだハプスブルク家での窮屈な生活や、息子の皇太子の死の悲しみなどから逃れるために、たびたび彼女の前に姿を現すトート(死神)と次第に心を通わすようになっていきます。しかし、死神との恋は必然的に悲劇へと導かれていきます。
音楽はクラシックとロックを融合させたもので、ミュージカルナンバーとしてはロック調のものが多いのが特徴ですが、今回のセレクションでは、インストゥルメントとしての面白さを優先した選曲で構成してあります。
プロローグ
曲はエリザベートの暗殺より100年後の死者の世界での暗殺者の裁判シーンから開始します。ミステリアスに開始する木管高音の弱奏でのトーンクラスターは非常にコントロールが難しい部分ですが、バランスよく鳴らしてください。[2]から加わるスネアドラムは、ロックビートのイメージで力強く。これは、以降の曲に出てくる[5]、[30]も同様です。
皇后の務め
皇后としての立ち振る舞いを高圧的に諫める姑と、それに反発するエリザベートとのやりとりを歌った曲です。テンポよく歯切れよく演奏してください。
結婚の失敗
ワルツですが、全体的にウィンナ・ワルツのような不均衡なリズムはなく、曲の持つシニカルさを出すために、サーカス・ジンタのように3拍が均等なリズムで演奏してください。[12]からはやや大仰に、かつ徐々に深刻さが出るとよいでしょう。
夜のボート
この曲は前からそのままインテンポで続けても、直前で一旦ボーズを取ってもどちらでもかまいません。前の3拍子の2小節分が175小節からの1小節分のイメージです。冒頭の6小節間でクールダウンして次のAndanteのテンポにつなげてください。
ミルク
「子供に与えるミルクもないのに、エリザベートはミルク風呂に浸かっている!」という民衆の不満と怒りを表す曲です。全体的に重々しく訴えかけるように、テヌート気味に演奏してください。
楽しい黙示録
前曲の最終小節の3拍子1小節分のリズムが、そのままこの曲の1小節分のリズムに受け継がれる仕掛けになっていることに注意してください。ウィーンのカフェにて、没落してゆくハプスブルク帝国を揶揄する知識人達の会話が、いろいろな楽器のソロによって受け継がれていきます。軽妙だけれど、力強さも失わないように演奏してください。
私だけに
誰からも束縛を受けず、私は私だけのものというエリザベートが貫いた心情を歌う、劇中で幾度と繰り返される印象的なナンバーです。最初の木管のアンサンブルはバランスよく響かせましょう。また、イングリッシュホルンは音量の乏しい楽器なので、ソロとバンドとのバランスにも注意してください。[28]あたりから盛り上がり始め、[29]でクライマックスになるように持っていきましょう。
ヴェールが降りる
『プロローグ』の後半部分の再現です。前曲の盛り上がりのまま、スピード感を持って悲劇的に曲を閉じてください。
編成にハープがない場合は、ビブラフォンで鍵盤打楽器パートに書かれているオプションを演奏してください。
(星出尚志)
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