鬼は、地域によっては恐怖の象徴であったりあるいは畏怖の存在であったりするが、本作品の鬼はひょうきんで悪戯好き、誰もいない深夜にこれ幸いと跋扈するも人影や物音で隠れてしまう、そんなお茶目な一面も持ち合わせた様々な表情を見せてくれる鬼を空想した。笑う、騒ぐ、身をひそめるなど、多様な姿をイメージして演奏してもらえればと思う。
曲の序盤や中間部などのスローテンポな部分は、フォルテやピアノのコントラストが明確に出れば、メリハリがついて聴きごたえのある演奏になると思う。スローテンポの部分は速度変化を細かく指定しているが、その意図としては、「急に顔を近付ける」「距離を詰める」などの気まぐれな鬼たちの様子を表現するためのコントラストである。タイミングやその緩急の度合いなどは、作品全体の仕上げ方の中で各アンサンブルにお任せする。また同じ理由で、パウゼの取り方も表現によって拍節に厳密過ぎなくとも良い。49小節目senza tempoは、旋律を演奏しているパートに合わせるように他のパートが演奏すれば良い。106小節目で終了と思わせておきながらの2小節間は、鬼の茶目っ気(ちゃめっけ)を象徴するような、コメディックな2小節間である。是非最後まで気を抜かずに演奏していただきたい。
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