私の大切な友人、ガルシア安藤真美子さんから、この作品の存在を教えていただいたのは、彼女の大切なパートナー、エドアルド・ガルシアさんが他界されてから、半年ほどたった頃でした。
作品に対する彼女の思いを、ピアソラの魅力を吹奏楽を通して、多くの方々に知っていただきたいと、編曲(移調)に取り掛かりました。
タンゴの革命児の異名を持つアストル・ピアソラはバンドネオン奏者、作曲家として、多くの名演、名作を残しています。
その一方、アルゼンチンを代表する作曲家、アルベルト・ヒナステラ、フランスの女流作曲家ナディア・ブーランジェのもとで、クラシックの作曲技法を学び、約30曲のオーケストラ作品を残しています。
タンガーソもその中の1曲で、タイトルはスペイン語の遊びから来ています。アルゼンチンでは、何か素晴らしいものに出会うと、語尾に~zoを付けるのだそうです。例えばサッカーのゴールが決まると、golにzoを加え、Golazo!、いい曲を聴いたら、曲を意味するtemaにzoでTemazo!と叫ぶそうです。
Tangoにzoを加えたタンガーソ、無理やり日本語にするとすれば、「凄いタンゴ」、若者風には「タンゴやっべー!」となるのでしょうか。
Yahoo検索でヒットする、スワヒリ語の「広告」ではないようです。
初演は1970年、アメリカ合衆国ワシントンD.C.に於いて、行われました。
後に、ジャーナリストのNatalio Gorinの「Tangazoという作品がありますが、大きな反響がなく、他の作品の陰に隠れている様な気がします。」との問いかけに、このように述べています。
「ブエノスアイレスアンサンブルは良い演奏をしてくれたね。好きだけどちょっと塩胡椒が足りないような演奏だった。クラシック音楽の演奏家はそうゆうものだよ。ブエノスアイレスの音楽家ですら、タンゴは恥ずべきものだと思っているようだ。それは、クラシックの演奏家とポップスの演奏家の間に昔からある、敵対心みたいなものだよ。タンゴ演奏家とクラシック演奏会は、お互いを批判しあっているんだよ。コロン劇場(パリオペラ座、ミラノスカラ座と並び世界三大歌劇場のひとつ)で演奏する人々は、タンゴ演奏家をゴミを見るような目で見る。タンゴ演奏家は彼らを前に小さくなるしかない。でも、そうあるべきではないと思う。大きな間違いだよ。」(資料提供、翻訳:ブエノスアイレス在住バンドネオン奏者 西原なつき)
●演奏上のアドバイス
最初の師であるヒナステラの影響でしょうか、ホルンはかなり高い音域で書かれています。(エスタンシアを聴いてみよう!パワーを貰おう!)
サックス、トランペットを重ねてあります。音ミス(はずすこと)を気にせず、勇気を持って挑戦してください。(思い切りのよい音ミスはホルンの魅力!)
木管楽器のソロ、ソリの部分は伴奏が大きくなりがちです。ソリストの音量に合わせたバランスを考えてください。(ソリストはとにかく音量勝負!)
伴奏のリズム、アーティキュレーションはバンドネオンを聴いてみてください。ピアソラの名演、間違いなく参考になります。(リベルタンゴ!)!
原曲の弦楽器を打楽器のように叩く部分、スネア・オン・リムとしましたが、ベースドラム、金管楽器の胴体、あれこれ試して下さい。(傷、凹み、要注意!)
全体のニュアンスは原曲のオーケストラの音色のコピーではなく、管楽器アンサンブルとしての面白さを考えて下さい。(オーケストラ版のタンガーソは聴かない!オリジナルの表現を目指そう!)
Tangazoに寄せて
「日本人はみんな、タンゴといえばピアソラですね。って言うんだけど、僕たちにとってタンゴとは、数多くの素晴らしい古典のタンゴのことを言うんだよ。ピアソラは海外でいち早く認められたけれど、アルゼンチンで受け入れられるにはとても時間がかかったんだ。彼の音楽はタンゴではあるし素晴らしいけれど、新しすぎる。『タンゴといえばピアソラ』ではないんだ。」アルゼンチン出身の夫が常々言っていた。
Bunkamuraル・シネマで上映されたドキュメンタリー映画「ピアソラ 永遠のリベルタンゴ」を見て、「踊らないタンゴはタンゴじゃない」というアルゼンチンの人々の概念が変わっていくまでの孤独な活動と、幼い頃に一旦離れたものの、若き天才バンドネオン奏者として再び戻った祖国アルゼンチンに対する思い、どんなバッシングも取り合わず自分の音楽を信じて突き進む様子が当時の映像を通して伝わってきた。同時に、夫が抱く「タンゴといえばピアソラ」という言葉への違和感も理解できた気がした。少しは正しくピアソラを好きになれただろうか。
南米をテーマにした管弦楽作品を集めたCDに「Tangazo」も収録されている。私のコレクションにかなり前からあり、何度か聴いてきたはずだったが、このドキュメンタリー映画を観て改めて聴くと、また違った感情が芽生えた。これはピアソラの作品のオーケストラ・アレンジではない。彼が管弦楽作品として書き下ろしたものだ。彼がすでにタンゴに革命を起こしていた頃、クラシックの作曲家になるべく渡仏して、ナディア・ブーランジェのもとで学んだ。初めはタンゴを封印していた彼が迷い悩みながら、彼女の助言も大きなきっかけとなり、たどり着いたスタイルがこの15分ほどの作品に込められているように感じた。それからというもの聴くたびに惹かれ、なぜかそのサウンドは、次第に頭の中で私が所属する東京佼成ウインドオーケストラの仲間達の音に変換されていった。
ピアソラ生誕100年という記念すべき年に、この作品を吹奏楽で演奏できるようになったことは、何かの巡り合わせとしか思えない。
今回、私の思いに共感してすぐに編曲してくださった仲田守氏に深く感謝いたします。
「不思議なもので、アルゼンチンから遠ざかるほどに、自分の国の音楽をもっと演奏したいと思うんだ。」と言いながら、私にアルゼンチン音楽の魅力を教えてくれた故エドアルド・ガルシアにこの素晴らしいアレンジが届きますように。(ガルシア安藤真美子)
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